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蛇使いな彼女BLOG

【第121回】エルクス研究会レポート②

2025.01.17

皆様、年末年始は楽しめましたか?

2025年一発目のヘビカノは去年12/11の研究会内容について書こうと思ってたんですが、またまた大真面目な内容でしたので要約をコラムにまとめました。




密度躍層と生態系

汽水域の水質に大きく影響与えるポイントとして、前回説明した「塩水くさび」のように、河川からの流入と潮汐による海水の侵入、またその地形特徴によって独自の生態系が確立されていると言えます。

例えば、2017年7月の中海の水質を見てみましょう。

水深は7m程度なので、表記していませんが水温はほぼ全層で30℃近くなっています。

DOは底層で貧酸素化し、クロロフィルは密度躍層付近で日周変動を行っていますね。塩分(PSU)は表層で20前後、底層は30に近い値です。ほぼ海水ですね💦

このときの現地調査(表層水)ではラン藻類のシネコシスティスや海洋性のシネココッカスが優占していたと報告がありました。1)

同時期、密度躍層付近の調査は行われていなかった為、日周変動しているプランクトン種は不明ですが、1990年代、中海湖心の底層(深度6.8m)調査では珪藻、緑藻、ラン藻等の優占種の他にも渦鞭毛藻やクリプト藻類などが発見されているとの事です。2)

中海は境水道から海水が浸入するため、表層塩分は他の汽水と比べて高く、多少風が吹いても安定した密度躍層を保っています。そのおかげで昔は赤貝やアサリ、藻類の漁獲で有名だったそうですが、埋め立て工事など環境の変化によってその数もすっかり激減したと地元の方々が揃って話しておられました・・・。

一方の宍道湖は、ヤマトシジミの他にもスズキやハゼが生息しているそう。植物プランクトンに関しては珪藻、緑藻、ラン藻類が優先しており、湖内の塩分濃度はPSU10~15で、最も塩分濃度の高い湖心底層でPSU20前後です。それも常に密度躍層が生じている訳ではなく、宍道湖-中海間の水位差によって塩分躍層が生成されたり解消されたりします。

前回レポート①で図示しましたが、このときの流動特性に関しては弱混合~緩混合が一致すると考えられます。3)

以上のように、塩分躍層の強度によって鉛直混合の起こりやすさや生態系に影響を与えるというお話でした。



参考文献

1)加藤季晋, 吉原 司, 大谷修司:宍道湖・中海の植物プランクトン水質調査結果(2017年度),島根保環研所報 第59号,p67-83, (2017)

2)大谷修司, 清家 泰, 奥村 稔, 相崎守弘:中海本庄工区における植物プランクトンの種類組成と現存量の季節変化, LAGNA 6,63~71頁,(1999)

3)溝山勇, 大屋敬之, 福岡捷二:連結系汽水湖における流動機構と長期流動シミュレーション, 土木学会論文集B1(水工学), Vol.67, No.3, 101-120 (2011)

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